「to you」2025年10月号
令和7(2025)年9月25日(木)発行
令和7(2025)年9月25日(木)発行
柱笑福
前回公演の模様
新版歌祭文 ©青木信二
公演の様子
《神官ホル(ホルス)のカルトナージュとミイラ》(部分)前760~前558年頃ブルックリン博物館蔵 Photo:Brooklyn Museum
鷹野隆大《2023.03.24.sc.#035》〈CVD19〉より 2023年 ©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
大熊弘樹 Untitled SM号 2020年
公演の様子
昨年の熱演
イラスト/田中聡
三上 慈人さん(みかみ・しげと)
ミュージックシアター ASAKITA総合監督
広島音楽高校を経て武蔵野音楽大学卒業。同時期に指揮と作曲も学ぶ。卒業と同時に往年の名プリマドンナ故大谷洌子氏(声楽家・演出家)主宰の「ニューアングルオペラソサエティ」の指揮者となり同団主催のオペラ公演やガラコンサートを指揮する。また国内外の指揮者のアシスタントを務めると同時に自らも多くのコンサート、オペラ、オペレッタ、バレエを各地で指揮する。昭和音楽芸術学院研究科等教育研究機関の講師も務める。その後渡欧、ウィーンを中心に多くの指揮者・演出家に薫陶を受ける。帰国後は演奏会及び舞台公演の指揮及び演出、講習会講師、コンクール審査員、放送局アドバイザー等幅広く活動。また舞台表現クラスを主宰し次代を担う舞台人の育成にも力を入れている。2019年より武蔵野音楽大学同窓生有志ウインドオーケストラに指揮者として参加(京都・愛知・富山)、さくらぴあ市民オペラにて指揮・演出を担当している。安佐北シンフォニックウインズ常任指揮者、ミュージックシアターASAKITA総合監督。
ミュージックシアターASAKITAに携わり23年の三上慈人さん。指揮・演出を務めると同時に、出演人数や演者の個性に合わせた台本執筆をするなど、プロジェクトになくてはならない存在です。今年の公演を前にお話を伺いました。
■自分が伝えたいことを見つける
ミュージックシアターASAKITAでは一般公募で参加者を募っており、楽譜が読めない、舞台経験がない方も歓迎します。毎回小学校低学年から60代と、世代も職業もさまざまな人たちで一つの舞台を創ります。指導で心がけているのは、本人が自力で答えを見つけるまで待つことです。もちろん教えることも必要ですが、育つ環境を作ることが私たちの役目だと考えています。作品をよく読み込み、理解した上で自分の思いや感じたことを台詞や歌に込めて表してほしいのです。参加者に「表現するとはどういうこと? 」と尋ねると「上手に歌う、上手に演じる」と答えることがよくあるのですが、「それは手段だよね。歌やお芝居を通してあなたが伝えたいことは何?」と、ちゃんと考える場を設けます。0を1にするのはあくまでも出演する本人で、こちらが用意した答えを出してもきっと簡単に忘れてしまう。自分が表現したいことを明確にする。舞台に立つには、「作品を通してこれを表現したい」と強く思うことが一番大事です。
■草の根文化活動と人材育成と
私はずっと音楽畑を歩んできたので、やはりこの舞台を通じていい音楽体験をしてもらいたいです。伴奏は毎回オーケストラの生演奏で、お芝居が主体の作品でも劇中曲や場面転換のBGMを生演奏にするなど、音楽を楽しんでいただきます。出演者や観に来られた方から、「今までクラシックはあまり聴いたことがなかったけど、モーツァルトに興味を持った」とか、「意識的にいろんな公演を観に行くようになった」と聞くと、やはり嬉しく思います。
このように、私たちのやっていることは草の根的な文化活動ですが、根底にあるのは本気の人材育成です。ミュージックシアターASAKITAを出発点に将来の目標を見つけた人、実際にプロの演劇人になったOGがいることも、講師陣一同、自分たちがやっていることの方向性に手ごたえを感じている点です。私たちのプロジェクトは今年30回の節目を迎えます。いつか海外や他県への出張公演など国や地域を越えて文化交流ができたらと密かに野望を抱いています。
三浦明子さんおすすめの一冊『二番目の悪者』
作:林 木林
絵:庄野ナホコ
発行:小さい書房
1,540円(税込) 発売中
情報が溢れる今の時代だからこそ読んでほしい一冊
これは、どこにでもある国のお話。ある時その国の王が、次の王様を国民で決めるようにとおふれをだしました。地位と名誉に目がくらみ、我こそが相応しいと思う金のライオン。街の住人がこの人こそ相応しいと思う銀のライオン。みんなの心が銀のライオンにあると知った金のライオンは、ある小さな嘘をつきました。始めは誰も信じなかった嘘が、次第に噂話として広がり始めました。そしてある時、街の住人たちは思いました、銀のライオンは悪いライオンだと。真実を知る者が声を上げた時には、すでに嘘は真実となり、その街を覆い尽くしていました。そして、選ばれた金のライオンによってもたらされた街の未来は…。人は己の欲のために嘘をつく。そして、無責任な行動が、嘘を真実へと変えていく。これは私たちの現実世界で、今まさに起こっていることなのです。情報が溢れる今だからこそ、私たちは自分の目で、心で、真実が何なのかを見極めなくてはいけないのです。
ジュンク堂書店広島駅前店アンバサダーとして、本や書店の楽しさを広く伝える。11月17日(月)に日浦公民館(安佐北区)でイベント開催。
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「能楽って楽しい!」こども能楽ふれあい教室に参加して
文・写真:to you 市民パブリシスト 梶川 芳文
「能」はたいていの人が知っているけれど、実際に観た人は案外と少ないのではないか。日本最古の古典芸能で650年の歴史がある「能」に、この度初めて向き合う私はちょっと済まない気持ちで取材に挑んだ。JMSアステールプラザ中ホールに1時間かけて設営された能舞台。その印象はシンプルで美しい。しかもその佇まいには、厳粛さがあり、思わず気は引き締められた。
この能舞台下に本日の参加者16 名が親子で寄り集まり、舞台上に能楽師の先生方を迎えた。親の勧めで参加したこどもが多く、学年も小学1年生から6年生までと幅広い。「能楽って楽しい」とこどもたちが思えるような「ふれあい教室」は、私にとっても能の基礎知識を学ぶ絶好のチャンスだ。
舞の所作の美しさ。お囃子のテンポは迫力があり軽快だ
講師は能楽シテ方(シテとは能の主役)の大島衣恵先生で、能舞台の説明から始まった。能を舞う本舞台の左手に登場人物の通路がある。この橋のような部分は「橋掛」との名称で、何と「あの世」と「現世」を繋ぐものとの説明に俄然興味が湧いてきた。橋掛かりから神や鬼や亡霊が本舞台に登場し、舞台後方のひな人形の五人囃子に似た「囃子」から、鼓や笛の演奏に合わせて謡い舞うイメージが講師の説明から広がっていく。
「深く息を吸い、遠くに向かって声を届けるイメージで」との指導で、こどもたちは能「高砂」の一節を謡った。低学年には難解な内容だが、この日本古来の発声法は能楽が後世に伝承する大切な使命を果たしているように思えた。
後半は、こどもたちを2班に分けて「舞」と「小鼓」の実技指導だ。白足袋に扇を持ったこどもたちは、本舞台での練習に少し緊張気味か。それでも全員の足で踏む拍子がピタッと合った瞬間の心地よさは、「楽しい」と感じたはずだ。小鼓の扱い方を習い何度か打つうちに、こどもたちは驚くほど良い音色を響かせる。「気持ち良かった」は「楽しい」の始まりだろう。今後は、本日の参加者の中で希望者には5回の稽古を経て、10月13日に開催される「市民能楽のつどい」での発表の機会があるとのこと。私も「市民能楽のつどい」の演目を読み込んで、能楽鑑賞を待ち望みたいと思っている。
「ふれあい教室」から発表会本番へ挑戦する小学生たち(大島先生と)
「 to you 市民パブリシストによるバックステージレポート」は3ヵ月ごとに掲載します。
広島邦楽連盟=箏、三絃、尺八=
邦楽の振興を願い、1993年に福盛智子さん(生田流箏曲・地歌古典伝承者)が設立した団体。
数百年前に作られた貴重な古典の曲を保存し、後継者育成の活動をしています。海外ではカーネギーホールをはじめ、ドイツ、スイスなど8か国で公演し、毎年秋に縮景園で古典を中心にした鑑賞会を開催しています。
縮景園WEBコンサートで過去の演奏を視聴できます。視聴はこちら
◆第24回縮景園邦楽鑑賞会
奈良時代から平安時代に起きた出来事を元に伝承された古典の箏曲・地歌を演奏。
時/10 月19 日(日)
①10:30~
②13:30~
会/縮景園 清風館
料/①②各3,000円
別途入園料必要
問/事務局 TEL.082-228-8693
詳しくはこちら
●動物画家 石村嘉成の世界
NTTクレドホールにて「動物画家 石村嘉成の世界」を5歳と3歳のこどもと一緒に鑑賞してきました。1時間くらいで出るつもりでしたが、こどもたちは作品に夢中になり、2時間滞在していました。石村さんのお母様のお話のコーナーでは、今子育てをしている私にとっても、改めて考えさせられるものがありました。芸術作品を見て、こんなに感動したのは久しぶりでした。行って良かったです。 (安佐南区 りんごさん)
☆ 家族の献身的な療育、そして動物を描きたい思いがとても伝わる展覧会でしたね。お子さんたちが絵を見ながら、感じたことを聞くのも楽しい思い出でしたね。(編)
●「難しい」から「面白い」へ
広島市現代美術館の被爆80周年記念の展覧会「記憶と物」に行ってきました。若手の招聘へい作家たちや、現代美術館のコレクションなども含めての展示で、いろいろと考えさせられる内容でした。現代美術は正直、理解が難しい作品もありますが、作品を見て考えることも少しずつ面白く思えるようになってきました。 (南区 さくらこさん)
☆ 現代美術は発想の自由さに圧倒されたり、作品の背景にあるメッセージを発見する楽しさがあったりしますよね。週末には展示解説「アートナビ・ツアー」も開催されていますので気軽に参加してみてください。(編)
●古くからの名勝地
to you9月号の「もぐりんと歴史探検NO.6」を読みました。湯来温泉が1500 年前から存在していたとは知りませんでした。久しぶりにまた行ってみたくなりました。 (安佐南区 川﨑智恵さん)
☆ 湯来温泉は広島市中心部から気軽に行ける奥座敷ですが、その歴史を知るとさらに興味がわきますよね。11/2(日)には湯来交流体験センターで「湯来フェス!!」を開催。温泉とともに神楽や和太鼓、料理や特産品をお楽しみください♪(編)
「Mail Box」に投稿してくださった方には抽選でプレゼントを進呈いたします。
❶広島県立美術館『古代エジプト』(5組10名様)
❷人形浄瑠璃『文楽』(昼の部・夜の部 いずれかの希望の部を記入/2組4名様)
❸『鷹野隆大 カスババ —この日常を生きのびるために—』(5組10名様)
❹『音楽の花束<秋>』(2組4名様)
投稿は、投稿フォーム、FAX、郵送で受け付けています。詳しくは「『Mail Box』への投稿はこちら」からご確認ください。
◆応募締切/10月10日(金)当日消印有効
マゴじゃない ミユと言い張る 三才の孫は しきりに頬ふくらます
大東 敬子(第33号一般の部・短歌部門)
わたり鳥 空にまい上がる りゅうのまい
大地 文弥(第33号ジュニアの部・小学生低学年・俳句部門)
(公財)広島市文化財団 企画事業課「to you」係
TEL.082-244-0750 FAX.082-245-0246